とあるひのこと
「プロポーズをね、されたの。でも、あたしは断ったわけ…そしたら、さ…もう付き合ってはいけないでしょ?だから別れたの」
「…んー?よく分かんない。何で?西原と結婚するのそんなに嫌だったの?」
菜々は何となくどうしてなのか分かるのか、何も言わずに少しだけ湯の中で足をぷらぷらと動かしている。
「先輩と、っていうのじゃなくて。結婚っていうのがね、嫌っていうか抵抗あるかな」
「どうしてよ?」
「あたしはさ、能力があるでしょ?人とは違った。結婚するってなると、自然と子供を…って思っちゃうのよね。もしね、子供を授かる事が出来たとして、でも能力が遺伝とかしたら、どうしようって思っちゃってさ」
「遺伝したら、いけないの?」
「いけなくはない…と思う。分かんない。でもさ、そうなると大変なんだって。使いこなせるようにしないとでしょ?自分がするつもりなくても、あっちこっちで火の手が上がったら危ないし…コントロール出来るようにするのって大変。それに、それで人との付き合いが怖くなる事もあるし…皆が理解して受け入れてくれるとは限らないからね」
「でも、こさめはむつの事好きよ?直弥もそう思ってると思うし」
「うん、ありがと。あたしも、こさめの事好き。勿論、篠田さんの事もね。でもさ、2人はあれだし…だからさ、能力の事を知っても、ずっと友達で居てくれる人ってやっぱ少ないと思うんだよね…あたしも言えないし、こんな能力あるんだよーなんて」
「うーん…分からなくはないかな、むつの言ってる事。こさめも、そうだもんね…ずっと直弥と一緒に居られるわけじゃないもんね」
「…何で?こさめさんは篠田さんと住んでるのに?別れそうって事なの?」
こさめが何で、そういう悩みを持っているのかと菜々は気になったようだ。こさめは、困ったようにむつを見た。
「…菜々はさ、普通の、本当に霊感もなんっにもない人だよ。でも、器はデカいわよ。自分の目で見た事なら有り得ないって思える事でも受け入れてくれるし、それで付き合い変えるような人じゃない。だから、こさめが決めて」




