とあるひのこと
西原の後からむつがゆっくりと戻ると、すでに颯介、祐斗、山上、篠田と菜々とこさめは居なくなっていた。冬四郎だけが、京井とゆっくりと呑んでいる。先に戻っていた西原も、素知らぬ顔で冬四郎の隣に座って酒を呑んでいた。
「あれ…皆は?」
「お風呂入って寝るそうです。朋枝さんとこさめさんは上のお風呂に行きましたよ」
「あ、そうなんだ…」
むつは京井の隣にぺたんっと座った。そして、置いてあったお猪口を取るとちびっと舐めるように呑んだ。
「…酔いはさめましたか?」
「うん…」
「どうしました?」
「んー?」
残っていた酒を舐めて残りが少なくなると、お猪口を持ったまま京井に寄り掛かった。むつの重みなど大した事ないのか、京井はむつの頭を抱くように引き寄せた。
「珍しく甘えたさんですね。それも宮前さんにではなく、私にですか?」
「しろーちゃんの横、先輩に取られた」
拗ねたように言うと、西原がすすっと避けて自分と冬四郎の間に1人が座れるくらいのスペースを作った。そして、ぽんぽんと叩いた。
「遥和さんがいい」
「むぅちゃん雰囲気が変わりましたね。少し…」
「少し?重たくなった?痩せた?」
京井は言いよどんで、冬四郎の方を見た。だが、京井が何を言おうとしていたのか、冬四郎にも分からずに首を傾げた。
「お母さんに似てきましたね」
「…そうなの?」
むつが首を傾げながら、冬四郎の方を見ると冬四郎はむつと同じように首を傾げた。




