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ひとりきり
むつの手紙通り、祐斗は一生懸命にパソコンに向かっていた。手紙は2枚あり、1枚の内容は、予想通り、今日中に終わらせて欲しい事務処理についてだった。2枚目は、昼休憩取る頃に読むようにと書いてあり、まだ内容は分からない。
現役大学生であっても、タイピングの苦手な祐斗は、手元を見ながら打つので少しばかり遅い。
営業開始の10時を少し過ぎた頃に出社した、背の高い30代の男、湯野 颯介は祐斗の様子を見て、くすりと笑った。
ドアが開いた事にも気付かないくらい、集中している祐斗の後ろを通りキッチンで3人分のコーヒーを入れてきた。
「祐斗君」
「あっ‼湯野さん、おはようございます」
「うん、おはよう。朝から仕事熱心だね、むっちゃんからの指令かな?」
「そうなんです…そこそこ量あるので」
「そうだろうね。ここ最近、細々した仕事多かったし」
颯介は祐斗と山上の前にコーヒーを置くと、自分のデスクに戻りパソコンを立ち上げた。そして、コーヒーを飲みながらメールのチェックを始めた。
祐斗はミスのないように、真剣に画面とキーボード、むつからのメモを見ながら書類の作成に必死だった。




