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ひとりきり
「湯野ちゃんは、寄り道してから来るから、もうそろそろ来るんじゃないか?むつは、昨日から出張だ。明日、帰ってくる、予定になってる」
祐斗は頂きます、と言ってから缶コーヒーを開けて口をつけた。
「出張?どこに行ってるんですか?」
「篠田の所だ。みやと一緒にな」
「また何か警察絡みの仕事ですか?」
山上は、いやいやと手を振りながらキッチンに入っていった。すぐに、換気扇の回る音と、かちっという音がした。
祐斗は缶コーヒーを持ったまま、キッチンを覗くと、換気扇に向かってタバコの煙を吐く山上が、にっと笑った。
「いいや、篠田個人からの依頼な。みやは…まぁ運転手兼友人として、って所だな」
「よく分からないっすけど」
「そんな心配そうな顔すんなって。むつだから、大丈夫だろうよ。それに…大した仕事じゃねぇよ」
「それは心配してませんけど…」
山上は、肩を揺らして笑った。
「むつが居なくてつまんねぇんだろうけど…あ、そうそう。むつのデスクにお前宛の手紙がある読んどけ」
「はーい」
祐斗は少しだけ嫌そうな顔をしたが、それでもどこか期待するように、むつのデスクに向かっていった。




