とあるひのこと
「むつ、しばらく仕事も立て込んでたし。ちょっとゆっくりしないか?社員旅行って事での温泉なんだから」
「…社員旅行?」
「っても、みやと西原もだけどな」
「えー?社員旅行じゃないじゃん、それ」
本当に嫌そうな顔をして、むつは冬四郎と西原を見た。むつがそういう反応をする事は承知していたのか、冬四郎と西原は困ったような笑みを浮かべていた。2人の反応からして、そこまで2人共行きたいと思っているわけでは無さそうだった。
「何で?」
たい焼きの尻尾を持って、たっぷりと入っている芋餡をぺろっと舐めたむつは、聞く姿勢とは言い難い様子だったが、とりあえずはちゃんと話して貰いたい様子であった。
「最近は、かなりこの2人に協力して貰ってるだろ?お前が拉致られた辺りからな。だから、俺が晃に相談したんだ」
「山上さん順番が逆ですよ。むつ、最近忙しかったろ?それは山上さんから色々、聞いてたんだよ。それでな、むつが悩んでるってのもあったし、気晴らしになればと思って、俺が京井さんに相談して。京井さんの所の温泉宿が取れたから、ついでに冬四郎と西原君もってなったんだ。京井さん所の温泉は傷に効くって…」
傷と聞いて、むつはぴくっと肩を震わせた。晃が失言をしたと口を押さえたが、すでに遅い。眉間にシワを寄せた山上が晃の太股をつまみ上げて、ねじっていた。晃は痛みに顔をしかめたが、声には出さなかった。




