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あこがれとそうぐう
「ちょ…篠田さんっ!?」
「むつさぁあん」
「うわ、きもっ」
「篠田てめぇ何してんだよ‼」
四人の声が、ばらばらとした。むつの肩を掴んでいた篠田と呼ばれた男は、最終的に山上にばしんっと頭を叩かれた。
むつが、これ見よがしに篠田に触れられて汚れたといわんばかりに、さっさと払った。
「篠田さん?」
疲れきった様子の篠田を座らせる為にむつは、椅子を空けた。大人しく座った篠田は落ち着いたのか、はーっと溜め息をついた。
「お前、まだ忙しいんじゃないのか?」
「えぇ、まぁ…その、処理とかで」
篠田は顔を上げた。顔色もよくないし、目の下にはくっきりとした隈が出来ていた。
警視庁所属の警視である篠田 直弥は、この前の仕事で快く協力をしてくれた人だ。その代わりに、むつたちは篠田が出世の足掛けになりそうな、情報をボイスレコーダーに入れて渡していた。
それがあり、篠田は忙しい。少しは落ち着いてきているとは、噂程度に聞いていたが、この様子から察するにまだそうでもないようだ。