るーぷ
りりんっと音が響いている。むつは身体の横に手をついて、少し上を見上げるような体勢を取っている。鈴の音に耳を傾けているのか、目を閉じている。コンクリートに座っていたら尻から、冷えるだろうにと思った祐斗は持っていたコートをむつの肩にかけた。そして、祐斗も隣に座った。
「…音の反響凄いでしょ?」
「はい。あれって、沢山の鈴ですか?」
「1つだよ。小振りなやつだと思う」
「こんなに外まで聞こえてきてるし、反響するもんなんですか?いくら夜で外も静かでも…」
有り得ないという顔の祐斗は、むつの方を見た。むつは相変わらず目を閉じて、空の方に顔を向けていた。
「音に自分の力をこめてるの。その音で相手を癒して、落ち着かせて往くべき所に促してあげる…そういう力だよ」
ごろんっと寝転んだむつは、腹の上で手を組んで空を見上げている。まだ真っ暗な空には、多くの星が瞬いている。
「澄んだ音は、あの人の性格をよく現してると思うよ…信じられないかもしれないけど」
「信じられませんね」
「でしょうね。でも、優しいでしょ?何回も何回も事件の事が繰り返されるのに終止符を打つのに、わざわざ手紙を出したんだもん」
「自力で何とか出来るのにしないのは、面倒くさがりなだけな気がしますけど」
「それはさ…言ってたでしょ?管轄外って」
「でも、今はこうして…」
「うん。確認したかったんだよ」
「確認ですか?」
むつは何も答えずに、祐斗の方をちらっと見ただけだった。何か隠し事をされていると祐斗は感じたが、問い質そうとは思わなかった。隠し事をよくするむつではあるが、話す時がきたら前みたいに言ってくれるだろうと思ったからだ。




