あこがれとそうぐう
翌朝、むつと冬四郎は、篠田とこさめに見送られ帰路についていた。
朝起きると、こさめは猫に戻っていて篠田が明らかにがっかりしていた。だが、こさめは喋っていたし、むつがまた少しすれば人の形を取るようになりますよ、と言うと凄く喜んでいた。
「今回は…引っ掻き傷だけで済んで良かった、なのかなぁ」
むつは袖を捲り、こさめの爪で出来た傷を眺めていた。かなり、数が多いし瘡蓋になってる所もあった。
「良かった…んじゃないか?なぁ、それより何でこさめちゃんは、負の感情?に引きずられたりしなかったんだ?あのマリア像みたいに」
「それはね…」
むつは言いかけて、ぷっと笑った。
「愛だよ、愛」
言うとまた、一人で肩を揺らしてくすくすと笑っている。
「あのね、こさめちゃんはずーっと、ずーっと篠田さんが好きで、いつか話したい一緒に歩きたいって気持ちを持ってたの。でね、そこにあの人型と負のエネルギーが作用したのよね。マイナスに負けないくらいの、愛をこさめちゃんは秘めてたってわけよ…篠田さんが猫が喋るって言ってたのは、あの霊が篠田さんに近付くのをこさめちゃんなりに守ってたからなんだよねぇ」
本当にいい話だよねぇ、とむつはまたくすくすと笑っていた。
「そんな事もあるんだな」
「そりゃあね…篠田さん、野良を拾ったとしか言わなかったけど。死にかけってくらい、弱ってたのを献身的に介護してあげてたんだって。篠田さんの愛情を受けて、だよね。うーん、障害のある愛のが燃え上がる的な?」
むつはまだ笑っていた。




