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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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るーぷ

仕事で暗い場所に行くのは慣れてるとは言えど、祐斗はむつほどに現場の経験はない。それに、どこを歩いても常に霊の気配のする場所にも慣れてはいない。何も気付いていないかのように、するすると階段を下りていくむつから、あまり離れないようにと、祐斗は急ぎ足になっていた。


だが、むつが急に立ち止まるとその背中にとんっとぶつかってしまい、よろけたむつは数段だったが、階段から落ちた。余計に焦った祐斗が駆け寄ると、起き上がったむつは素早く辺りを見回して祐斗を引き寄せた。


「大丈夫だから、静かに…誰か居る」


防火扉のすみで、むつのコートの中に隠れるような形になっている祐斗は、口元に手を当てて息を殺していた。すぐ真横にいるむつも緊張しているのか、どくっどくっと心臓が少し早く脈打っている。それを感じられるほどに、むつと祐斗の距離は近い。


「………」


ぺたっぺたっと乾いた足音が聞こえてきた。むつの言った通り、誰かが居る。広瀬の話では被害にあった者たちは睡眠薬で、眠らされている。それが本当で広瀬を信用するとなると、聞こえてくる足音は犯人か共犯者のどちらかのものだろう。


むつと祐斗のいる、防火扉のすぐ向こう側で足音は止まった。見付かるかもしれないと思うと、むつも祐斗も動けずにいた。階段に向かうつもりなのか、爪先が見えた。だが、そこからは動かなくなり、何事もなかったかのように、ぺたぺたと廊下を歩き、足音は遠ざかっていった。だんだんと足音は聞こえなくなり、それと同時にがこんっと音がした。ごぅんごぅんという音が微かに聞こえてくる。


『エレベータで降りたみたい』


「居なくなったみたいです」


どこに隠れていたのか、広瀬がやってきて廊下をちらっと覗いてから祐斗に言うと、祐斗も小声でむつに伝えた。むつは、安心したようにはぁと溜め息をついた。

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