あこがれとそうぐう
貰い泣きしそうになっているむつが、こさめの背中をそっと押すと、こさめは篠田の胸に飛び込むようにして抱き付いた。
こさめと入れ違うようにして、冬四郎がむつの隣に座った。
「ハッピーエンドってね」
むつは少し鼻をすすり、にこにこと篠田とこさめを見ている。
「お前、篠田さんが拒否しないの分かってただろ?」
「勿論。妖も霊も好き。そんでもって、こさめちゃんを大切にしてる篠田さんが妖になったこさめちゃんなら、喜んで迎えると思ってたよ」
「あれだな…篠田さんの物好きが高じて、余計な事にもなったけど…結果としては良かったんだな?」
「じゃないのー?あんだけ仲良くしてるんだから。篠田さんに嫁が出来たね」
「あぁ。何か公開プロポーズを生で見せられて恥ずかしかったな」
「本当それ…けど良かった。もし、否と言うならさっさと連れて帰ってやろうと思ってたからさ」
「ん、もしかしてあの服…」
「買ったのは全部こさめちゃん用」
むつがきっぱりと言うと、冬四郎は少しだけ残念そうな顔をした。
こさめは篠田の胸に顔を埋めて、まだ泣いていた。だが、あれはどう見ても嬉し泣きなのを知っているだけに、止めようとは誰もしなかった。




