るーぷ
病室に案内されたむつと祐斗は、とりあえず部屋の中をあちこち見た。トイレはユニットバスになっているが、清掃が行き届いてないのか、生臭いような臭いが立ち込めている。
「くせぇ…」
備え付けのテレビも冷蔵庫も使い物にはなりそうにないし、洗面所の蛇口を捻ってみても水は一滴も出ない。文句を言ったむつは最後に、ベッドをさっと触った。
「湿気てる…」
「…仕事で色々行ったけど、こんな所に泊まる事になるなんて…」
「祐斗が検査してくれって頼んだんじゃん」
「だって、むつさんも何も言わないから何か不安で…でも、こんな所で検査なんて」
「ま、お泊まりして何が起きてるのか探るのが目的だからさ。先ずは第一関門クリアって事ね」
湿気てると文句を言ったものの、むつはベッドに腰掛けて、コンビニの袋をひっくり返ししている。菓子の袋に昼に買ったカフェオレが出てきた。むつは、祐斗にカフェオレを渡した。そして、菓子の袋を開けた。
「飲食禁止って…」
「はぁ?あんた、見た?ドクターの机埃ついてたわよ?そんな所に直に置いた綿棒なんて、そりゃ何かしら菌でもついてるわよ。引っ掛かりもするわよ」
「げっ‼俺、そんなのを鼻に突っ込まれたんすか?って事はあの注射針も、やばいっすか?」
「かもねぇ…」
スナック菓子をばりばりと食べながら、むつは他人事のようだった。
「そもそも、検査なんてしないで帰るわよ?ちょっとお腹に入れときな」
「けど…」
指先の菓子のかすをぺろっと舐めたむつは、ふふっと笑って座るように湿気たベッドをぽんぽんと叩いた。




