57/1310
あこがれとそうぐう
むつに手を引かれ、こさめは篠田の向かい側に座った。ちょうど、男女でわかれる形だ。
「さて…どう何を話したらいいものか」
こさめは緊張しきっているのか、むつの手をぎゅっと握っている。猫だからか、爪が食い込んで痛い。
「居てください、と言ったものの…何を話したら良いんでしょうか?」
「そんなの…簡単ですよ。篠田さんは人間、こさめちゃんは妖。これから一緒に生活するか否か、ですよ」
「僕は…嬉しく思ってる。これからは、僕が一方的に話すんじゃなく、会話が出来るんだと思うと」
篠田の言葉を聞き、むつと冬四郎は居心地悪い気がした。何だか恥ずかしい。
「こさめは僕と生活していく事は出来ないかな?」
ぼろぼろとこさめの目から涙がこぼれ落ちている。そして、大きく首を振った。
「嫌じゃないなら返事が欲しいな。まだ、こさめの声を聞かせて貰ってないから」
「嫌じゃないっ」




