るーぷ
自動ドアの前に立った2人だったが、自動ドアが開かない。むつはセンサーのあるはずの上を見上げた。とんとんっとジャンプして、センサーに向けて手を振っている。
「…むつさんって自動ドア反応しない人ですか?」
「この前もコンビニの前で開かなくてさ。こういうの1人の時って本当に地味で恥ずかしい」
病院に行くのを渋っていた2人が、今は病院から入るのを渋られている。むつと祐斗は仕方なく、自動ドアに指をかけて無理矢理にもこじ開けようとしている。2人が外で困惑しているのに気付いたのか、受付に居た看護師がぱたぱたと駆け寄ってきた。そして、内側からも一緒になって開けてくれ、ようやく2人は院内に入る事が出来た。
「…うっ‼」
足を踏み入れてすぐ、祐斗は口元に手をあてて呻いた。少しよろけたのか、受付から出てきた看護師が、心配に祐斗の顔を見ている。
「どうしたんですか?」
「出張で来てたんですが、彼が体調を崩したようで…診ていただけますか?」
むつはあからじめ、決めていた言葉なのかすらすらと看護師に話している。さらには祐斗を気遣うように、背中に手を回してさすっている。むつの対応力というか、咄嗟のアドリブ力には祐斗も流石だと思っていた。
看護師とむつに促され、祐斗は待合室のソファーに座った。その間に、むつは看護師と共に受付に行くと、簡単な問診表と体温計を持って戻ってきた。祐斗の隣に座ったむつも、すでにどこか顔色が優れない。
「…むつさん、まじでやばいですって」
「けど、来ちゃったわよ。修行だと思え…問診はあたしが書いてあげるから、とりあえず熱計りなよ」




