るーぷ
車に戻ったむつは、鞄を膝の上に置いたままで細い道に車を走らせていく。来た事のない土地で、目的地は近いのにどこにあるのか分からず、一方通行でもない細い道に入ったからか、さすがにむつは慎重に運転している。左右には背の高い生け垣がかり、サイドミラーががざかさと時折、擦れる音がする。
「大丈夫ですか、こっちで…」
「だって、カーナビ的にはこっちよ?」
慎重さはあるものの、行き当たりばったりなのは相変わらずなようで、嬉しいようなそうでもないような気がして、祐斗はドキドキしながら、じっと正面を向いていた。
「あ、ほら!!」
少し先に大きな白い建物が見えてくると、むつは合ってたよと笑みを見せている。
「何かそんなに古い感じでもなさそうですね」
「うーん…でも暗いね」
何階建てなのだろうか、屋上の近くには黒字で病院の名前が大きく書いてある。だが、街灯が少ないからなのか折角書かれている文字もよく見えない。
建物を目印にゆっくりと近付いていくと、広々とした駐車場があった。むつは、えーっという顔をしているし、祐斗も嫌そうな顔をしている。どう見ても、2人ともこの病院内に入るのを躊躇っている。だが、来たからには仕方ない。素通りするわけにもいかず、むつは駐車場に車を入れた。
「駐車場、がらっからですよ?」
「地元で有名なやぶって感じかしら?」




