るーぷ
むつがやけに真剣な顔つきになると、祐斗の不安はさらに大きくなっていた。仕事では常に、現場に行くまでどんな事が起きるか分からない。簡単そうに見えてもそうでもない事が多い事は、少ない経験からして祐斗もよく分かっている。
「…あ、お蕎麦か、いいねぇ」
「むつさん、何考えてるんですか?」
「お昼ご飯。次の次くらいで高速乗るよ?その前にご飯。何が良いか決めてよ、早く。奢るから」
「え、良いんですか?」
「良いよ。祐斗にも心配かけたし、泣いてくれたそうだからね…お礼を兼ねて」
むつが誘拐されたあげくに殺されたとなった時には、祐斗1人だけがめそめそと泣いていた。それを誰かから教えられたのか、祐斗は恥ずかしくなっていた。
「照れんなよ。嬉しかったよ?はー泣いてくれる人居るんだなぁって…ま、まだ死んでないけどさ」
「…簡単に死なれたら困ります」
「お、じゃあ早く一人前にならないとね。で、お昼は?あたし今日、朝時間なくて、そこそこお腹空いてるんだよね」
「えー…じゃあ、あ、ラーメン屋ありますよ。ラーメンとかどうですか?」
「おっけー。祐斗も麺好きだよね」
「むつさんもですよね?」
「うん、メンクイ」
「…意味違ってきますよ?」
「あーね。これさ、誰に言ったのかな?ちょっと前にも、こんなやり取りあってさ…メンクイのくせに趣味悪いって言われたんだよねぇ。失礼しちゃうわ」
「それは、何とも…」
むつが好きだという海外の映画俳優の顔を思い出しながら、祐斗は否定は出来ないなと思っていた。




