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あこがれとそうぐう
「えぇ。篠田さんは今、心身ともにお疲れのご様子です。その弱った心と身体につけこまれたのでしょうね。病は気からとは、よく言ったもので…これだけの物と過ごしてて今まで平気なのに、今になって影響を受けるはずありませんからね」
呆れたようにむつは笑った。
「では、もう人型を破った以上何かが起きる事はない、という事ですか?」
「大丈夫です。これは後で灰にしておきます…女の方はこれでおしまい。ですが…こさめちゃんの方はどうでしょう」
「ど、どうと言いますと?」
「このマリア像同様に影響を受けたようなのです…んーそう、ですねぇ…こっちがマイナスならこさめちゃんの場合はプラスと思って頂いても宜しいのではないかと思います」
篠田の不安そうな顔を見て、むつもどう話したらいいのかを迷ってしまった。
「篠田さんは、こさめちゃん好きですか?…妖になってしまっていても一緒に生活していこうと思えますか?」
篠田は少し迷うように、視線をさ迷わせたが、むつを見ると頷いた。その目を見て、むつも頷いた。




