るーぷ
「…それにしても、よくこのよろず屋御中ってだけで、うちに届きましたよね?」
「ってか、消印もない」
「直接持ってきたって事かい?」
颯介もそれには気になったのか、祐斗から封筒を受け取ると、宛名を見たりしている。
「…差出人の名前はあるね。調べてみるかい?電話帳とかでなら、出てくるかもしれないよ」
「まぁ…そうね。一応は依頼だし。3通もあるって事は、よっぽどの病院なんだろうね」
「ついでにむつ、診て貰えよ。ちょっと鼻声だぞ?新居、まだ寒いんだろ?」
「大丈夫。それなら藤原の所行くから」
山上がからかうように言うと、むつはきっぱりと断った。そして、椅子から立ち上がり倉庫から分厚い電話帳を持ってきた。そして、封筒の名前があるかを探して薄いページをぱらぱらとめくり始めた。
「ねぇ、依頼なら料金取らなきゃじゃん?どーすんの?差出人の名前しかないってなると、わざわざお家訪問?」
「…近場だと良いですけど」
祐斗がマグカップを持って立ち上がると、むつは電話帳から顔も上げずに自分のマグカップも持ち上げた。祐斗は嫌な顔をする事もなく、受け取るとキッチンに入っていった。
「あ、あー…」
むつは悩んだような声を上げながら、デスクの端に置いてあるメモ帳を引き寄せると、ボールペンで何かを書いていく。そしてまた、ぱらぱらとページをめくった。
コーヒーをいれて戻ってきた祐斗は、むつの分をデスクに置いた。むつは祐斗が横にいるうちにと、先程書いたばかりのメモを見せた。立ったままの祐斗は、砂糖多めで甘くしたカフェオレを飲みながら、首を傾げている。
「この人が…出張での人でしょうか?」
「たぶん。これ、自宅の番号、かけてみて」
メモを受け取った祐斗は席に戻ると、メモされている番号にかけ始めたが、現在使われておりませんだった。




