るーぷ
「病院での怪異現象?まぁよくある話だよね」
手紙の内容は、出張中に突然体調が悪くなり行った病院での出来事だった。入院するように言われ、熱も高く立つこともままならない状態で、渋々急遽入院したが、夜になるとベッドは揺さぶられるし、廊下をぱたぱたと走る足音、急患がぞくぞくと運ばれてきたり、緊急アラームが鳴り響き眠れず、病状は悪化。入院費は高いし、次の日に自力で行った別の病院で説明をし薬を見せた所、薬が合っていないと言われたりと、散々だったという内容だった。
「夜にベッドが揺さぶられるっていうのは、怪奇現象っぽいけど…なんつーか、ヤブのくせに忙しい病院での出来事って感じじゃない?」
「まぁ…ですよね」
「でさ、これもう2通」
「え!?続きっすか?まさかの続き?しかも2通もあるんですか?どういう事ですか?」
「…違う人からでしょ。字が違うと思うもん。内容的にはおんなじだけどね…こっちでも、まぁ怪奇現象的なのが起きたって書いてある」
「同じ病院なのかい?」
「うん。同じ病院みたいよ。こっちではさ、血塗れのおばぁちゃんが出たとか書いてかるよ。あとは、黒い白衣のドクターとか…黒いのに白衣?」
「…むつさんはどう思いますか?」
「手術後、麻酔の切れたおばぁちゃんが、ちょっと痴呆気味で傷口を開いてしまった。で、徘徊。目覚めたら、たまたま目の前に居て、こわっ‼っていう結果。あとは暗い所で見たから、白が黒く見てたってーのが、黒い白衣?黒い白衣って白衣じゃなくね?」
むつは黒い白衣が何となく気に入ったのか、自分で言いながらも笑いを堪えるようにぷるぷると肩を揺らしている。
「まぁそんな感じがしっくりですね。病院に入院ってだけで、非日常ですからね」
むつも祐斗もそれで納得している。だが、それでも祐斗は2通の手紙も気になるのか、手を伸ばしている。




