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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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るーぷ

むつが誘拐された事件が終わり。荒らされた部屋から新しい部屋への引っ越しも終わり、むつの4人の兄の中でも1番上の長男、宮前晃と部屋に置く為のベッドにカーテンを買いに行った次の日の事だった。勤め先である事務所の片付けも終わり、むつはようやく日常の業務に戻りつつあった。


勤め先から少し離れた場所に引っ越したからか、むつはいつもより早く起きて家を出ていた。師走になり、クリスマスも近付いてきたせいか、町のあちこちにイルミネーションの飾りやツリーが置かれている。むつはマフラーで鼻まですっぽりと隠して、小さく舌打ちをした。朝っぱらから、駅の改札でいちゃいちゃしているカップルが邪魔で、改札が1つ塞がれ、そのせいで混雑している。イライラしたむつは、カップルをものともせずに2人の間を引き裂くようにしてわざと改札を通った。


コートのポケットに手を突っ込み、かつかつかつとビールを鳴らして、コンクリートの道を歩いていく。早足に歩いていたが、ふっと息をついて少し歩調を緩めた。


歩いている歩道のわきにある木には、まだ数枚の枯れ葉がついている。寒さも厳しくなりつつあり、何かと寂しげな季節だ。むつはふんっと息をつき、マフラーを少し持ち上げて顔を隠すようにして、会社に向かっていった。だが、その顔は不機嫌そうでもなく、マフラーに顔を押し付けるようにして寒そうに、はぁと息をついて事務所の入っているビルに入っていった。


エレベータを待っていると、後ろから足音が近付いてきた。のんびりとしたような足音に、むつが振り向くと長身の男が立っていた。コートにマフラー、手袋までして防寒は、ばっちりそうだった。


「おはよう。こうして、朝むっちゃんの顔が見れると、昨日も何事もなく無事だったんだなって思うよ」


「…おはよう。そりゃ…もう、大丈夫だもん。心配しすぎなんじゃない?」


長身の男、湯野颯介はからかうように、くすくすと笑った。


むつと一緒にエレベータに颯介が乗り込むと、待ちわびていたかのように颯介の襟元からにゅっと蛇のような物が顔を出した。颯介の管狐だった。むつは当たり前のように、管狐に手を伸ばして挨拶をした。

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