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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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うんめいとは

むつの自宅マンションの地下の駐車場に車を停め、3人でエレベータを上がっていく。


「何か久しぶりに家に帰る気がする」


「2週間ぶりくらいだな」


「うん、久々の我が家だ。帰ってくるってなると、ちょっと懐かしい気がするけど」


そう言いながら、むつはがちゃっと鍵を差し込んで回した。ゆっくり開けると、薄暗い室内からひんやりとした風が流れてきた。靴を脱いで上がったむつは、スリッパに履き替えてぱたぱたと入っていく。西原と山上は、下駄箱から勝手に来客用のスリッパを履い後に続いた。


リビングに入ると、立ち尽くしているむつが居た。2人の足音に気付いたのか、振り返ったむつは悲しげに笑っていた。


「…もぅあたしの家じゃないや」


割れたマグカップを拾い上げたむつは、はぁと重い溜め息をつきながら、破片と一緒にテーブルに置いた。赤いマグカップは、むつのお気に入りの物だった。


「そうだな。さっさと片付けるぞ。俺と西原は何したらいい?」


「うーん…冷蔵庫空にして拭いて。あと、割れてない食器を出してテーブルに置いといて、調味料とかも全部…勿体ないけど、もういいや」


「全部処分か?」


「うん。はぁ…本当勿体ない」


むつは勿体ないと繰り返しながら、流し台の下の扉からごみ袋を出すと、西原に渡した。


「可燃とそうじゃないの別けてね。あたしは…まず服から片付けるよ」


はぁと溜め息をついたむつは、自室に向かっていった。割れた窓にカーテンレールから外れ、破けているカーテンに真っ二つに割れたベッド。クローゼットの中身も引っ張り出され、床に散らばっている。だが、何故か下着だけはカラーボックスの中に適当な感じで、入れられていた。


溜め息しか出ないむつは、鞄からタバコを出して久々に吸い始めた。ナッツの香りとメンソールの爽快感が、鼻に抜けていくがそれが余計に切なかった。

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