うんめいとは
顔は赤く熱くなっているのに、手はしんやりとしていて、そのギャップが何とも不思議だった。うつ向きがちのむつに西原がゆっくりと顔を近付けると、むつはぎゅっと目を閉じた。眼鏡を外している西原でも、かなり顔を近付けているからか、むつの睫毛が震えているのが分かる。
「………」
「………ばかっ‼」
西原がいつまでも、むつに見とれているとぱちっと目を開けたむつは、腰を浮かせて西原に頭突きを食らわせた。思った以上に勢いがあったのか、ごちんっと痛そうな音がすると、むつは涙目になって額を擦っている。
「ば、ばかって言うな‼仕方ないだろ‼可愛いなと思って見てたんだから。好きな子に見とれて何が悪いんだよ」
「なっ…ばっ、ばっかじゃないの」
耳まで真っ赤になったむつは、それでも西原に自分の手を重ねたままだった。
「…何、恥ずかしがってんだ?」
「うるさい」
「キスされるの期待した?」
「し・て・な・いっ‼」
「可愛いな、むつは」
「…うぅるさい」
ぱしっと西原は手を頬から放させ、むつは真っ赤な顔のまま、ぷいっと背を向けた。自分でも耳まで赤い事を分かっているのか、むつは両手で頬を押さえている。西原は、そんなむつの様子を微笑みながら見ている。
「な、こっち向いてくれよ」
「やだっ」
「拒否かよ…恥ずかしいとかじゃなくて」
「あたしにも拒否権はある」




