うんめいとは
ワインを呑み干す頃には、顔を真っ赤にしたむつは、はぁと熱い吐息を吐き出していた。
「お前…大丈夫かよ?」
「へーき…けど、部屋戻るよ。無理」
「どっちだよ?1人で行け、ないな…」
西原は立つとむつに手を差し伸べた。椅子から下りたむつは、くらっとしたのか椅子に手をついた。
「大丈夫か?珍しいなお前…」
冬四郎が手を貸そうとすると、むつはゆるゆると頭を振ったが、すぐに額を押さえてうつ向いた。頭を動かして、気分が悪くなったのだろう。しばらく、じっとしていた。
「ん、大丈夫…しろにぃもいちにぃも呑んでて。むつはお部屋戻る…おやすみぃ」
「お、おい…西原君、悪いな。頼むよ」
「はい…むつ、ほら手」
むつは素直に西原の腕に手をかけ、ふらふらと出ていった。大人、4人はそんなむつと西原の後ろ姿を見送っていた。
「珍しいな、むつが1杯で酔ったぞ」
「体調万全でもないのに呑ませるからです」
「まぁまぁ、そう怒るなよ」
晃は、くっくっくと肩を揺らして笑っている。
「…ま、西原君なら大丈夫だろ」
「あいつらは、よく分からないよな。仲悪くはないんだろうけど…寄り戻すでもないし。けど、どっちも満更じゃないよな」
「そうなんですよね。この前、京井さんともその話になったんですけどね。むつもそろそろ嫁に行ってもいい年頃ですから」
「…晃と京井さんの好みが合うっていうのは…親心的なのが合うって事なのか?」
「あ、それもあります。でも、趣味の話とか、食事の好みとかもですよ?俺はむつ大好きですけど、常にむつの事ばっかり考えてませんよ」
「そうですか?私とお会いした時は、まず最初にむぅちゃんの事からお聞きになってますよ?」
京井に指摘されると、晃はあははと笑ってくいっとワインを呑み干すと、新たにグラスに注いだ。冬四郎は、妹を溺愛し過ぎてる兄を横目に、出ていった2人を気にするようにドアの方をちらっと見た。だが、そんな冬四郎に気付いてる山上と京井は、顔を見合わせるとゆるゆると首を振っていた。




