うんめいとは
「それで、どうだった?山上さんと部屋を見に行ってきたんだろ?良い所はあったか?」
「うん。決めてきたよ」
「そうか、そうか。それで、西原君と同じマンションはダメだって言ったのに、見に行ってきたんだな?」
「あ…うん。見るだけなら、と思って」
でれでれした顔をしていたくせに、急に険しい表情を見せた晃は、むつではなく西原を睨むように見た。同じ警察組織に所属しているとは言え、かなり階級が上の晃から睨まれた西原は、びくっとして硬直している。
「いちにぃ、でもね…先輩が一緒に来てくれたから楽しかったんだよ?」
「だからってむつ…全く、仕方ないやつだ」
むつが言い訳するように言い、晃の額に自分の額を押し付けて、ぐりぐりとするとまたすぐに、でれでれとした笑みを浮かべた。
「…完全にむつの言いなりだな」
山上はぼそっと呟くと、晃の隣に座った。
「山上さん、今日はありがとうございました。それで、むつは結局どの部屋に決めたんですか?」
「最後に見に行った所だな。今のマンションよりは少し、っても駅で言うなら4駅だから遠いな。事務所からは少し遠くなるけど、みやのマンションには近くなるんじゃないか?」
取り出した資料をテーブルに置くと、晃はむつが落ちないようにと、しっかり抱き寄せつつ間取りや住所を見ている。コーヒーをいれてやってきた冬四郎は西原にも座るようにすすめ、テーブルにコーヒーカップと灰皿を置いた。
「みやはこの辺、分かるか?」
「…いや、あんまり分からないですね。それより、気になるのはこの間取りなんですけど」
「あぁ、隣の部屋との間に物置用のスペースがあるんだよ。廊下に面してるけど、ちゃんと柵もあるしプライバシーは守られるから大丈夫だ」
「へぇ…良いですね。これなら隣の生活騒音気にならないですよね」
「そうなんだよ。それにむつは最上階の角部屋だからな。なかなか良い場所だぞ」
「あ、そうなんですか。良いな…」
冬四郎は羨ましそうに言いながら、コーヒーをすすった。
「明けの時に隣からの生活騒音気にせずに、ゆっくり寝れるもんな。まだ空きあったら、お前も引っ越すか?けど、ここは幼稚園も小学校も近いから日中は騒がしいぞ?」
「あ、それならパスですね。むつはそれを知ってても、ここにしたのか?」




