51/1310
あこがれとそうぐう
むつに付き合わされ、あっちもこっちも歩き回り、冬四郎は疲れていた。だが、ヒールをかつかつと鳴らして歩くむつに、そんな素振りはない。
「休憩する?」
「そうして貰えたら嬉しいな。まさか、お前の個人的な買い物に付き合わされるとは思わなかったしな」
「ん、なら…あそこで良い?」
「何処でも良いし、何でも良い」
二人はすぐ目についた喫茶店に入った。
「体力なさすぎでしょ」
メニューを冬四郎に見えるように開き、むつが呟くと冬四郎は鼻の頭に皺を寄せた。
すぐに注文を聞きに来た、ウェイターにロメンソーダとアイスコーヒーを頼んだ。店内が空いているからか、注文した飲み物はすぐに来たが、むつの前にメロンソーダ、冬四郎の前にアイスコーヒーが置かれると、二人は黙って交換した。




