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あこがれとそうぐう
白いハンカチを持って戻ってきたむつは、窓際の棚に手を伸ばしている。背伸びをしても届かないのか、冬四郎が後ろに立ち、手を伸ばした。
「これで良いのか?」
「うん、重いかもだから気を付けて」
それを掴んだ冬四郎は、両手で持つと慎重に下ろした。むつはベッドの上で大判のハンカチを広げていた。
「上に置いて」
冬四郎がハンカチの上にそれを置くと、クローゼットから出した紙と一緒にくるんだ。
「回収出来た。後は…」
包みを両手に持つと、むつはこさめの方を見た。こさめは、ぷいっと出ていった。
「ふふっ…ありがと」
むつは冬四郎の顔についた汚れを指で拭い、ちゃんと目を見て礼を言った。
「どういたしまして」
「さ、出掛けるよ。顔洗う?」
「え?何なんだよ。説明しろよな」
「篠田さん帰ってきてからで良いでしょ?ちょっと…話せない部分もある」
むつは上手くいくか分かんないし、と小声でつけたした。




