うんめいとは
冬四郎と晃を見送り、着替えを済ませたむつは京井と一緒に1階のロビーに行き、迎えに来るという山上を待った。
むつはスニーカーにスキニーパンツ、白のタートルネックセーターとファーのついてるダウンを着ていた。久しぶりに自分の意思で外に出れるからなのか、山上を待つ間も楽しそうに、辺りをきょろきょろと見回していた。山上がやって来ると、京井は心配そうにしながらも見送った。
「…また珍しく厚着だな。お前がダウン着てるのなんか初めて見た気がするぞ」
「お兄様が買ってきたからね。着ないと。そんな事より、あたしは社長の運転する車に乗るの初めてな気がするわよ」
「だっけ?とりあえずな、端から回るか。見たいの、6ヶ所だろ?」
「1つ、ダメだって」
「お?何で?どこだ?」
山上は信号で停まると、後部座席からむつが見に行きたいと言っていた部屋の、住所と間取りの書いてある資料の束を取ると渡した。むつはぱらぱらとめくったが、どこか分からないと呟いた。
「1ヶ所、先輩と同じマンションがあったらしいよ?そこはダメって、しろーちゃんといちにぃが言ってた」
「西原と同じマンション?あぁ…むつは?2人が決める事じゃないからな」
「見るだけ見たいな」
「よし、なら行くか。折角だもんな、色々見て決めないといけないよな」
むつが嬉しそうに笑うと、山上も笑みを浮かべた。そして、心配性すぎるむつの兄2人は、そろそろ妹離れしないといけないよなと思っていた。




