うんめいとは
山上とどの部屋を見に行くかを決めたむつは、明日が楽しみだと笑っていた。山上は、夜に連絡するからと言い封筒の方の物件情報は置いて帰って行った。もう夕方になり室内が薄暗くなってくると、むつは電気をつけた。だが、ほんの数時間起きていただけなのに、身体がしんどく欠伸を連発している。むつは目を擦りながら、もぞもぞと布団に潜り込んだ。
ふわふわの布団は冷たかったが、あっという間に暖かくなり、むつはすぐに眠りについた。沢山の睡眠をとり、水分をとって出せば熱はすぐに下がる。むつはそう信じていた。
くぅくぅと眠っていたむつは、とんとんっ、とんとんっとドアを叩く音で目を覚ました。部屋は電気をつけっぱなしにしていたから明るいが、カーテンの向こう側は真っ暗なようだった。カーディガンを羽織ったむつは、静かになったドアをそっと開けた。すると外側からにゅっと手が伸びてきて、ドアを掴んで勢いよく開けようとした。だが、山上が帰ってからもチェーンをかけていたおかげで、ドアはほんの少ししか開かない。
誰か分からないが、無理矢理にも入ってこようとする勢いに、むつはドアから離れた。引っ張ってドアを閉めようにも、近付くのも怖かった。
「…あだっ‼」
「…?」
「むつ、俺だ」
しばらく間をおいて、冬四郎の声だと分かるとむつはそろそろとドアに近付いて、ドアスコープから外を見た。
「…一回、閉めるよ?」
むつはぱたんっとドアを閉めてから、チェーンを外してゆっくりとドアを開けた。ドアの前には、冬四郎と冬四郎に少し似た顔の男が立っている。
「いちぃに?」
いちにぃこと宮前晃は、がばっとむつに抱き付き、ぐりぐりと頬を押し付けた。むつは、ううっと嫌そうな声をあげた。




