うんめいとは
「むぅちゃん。今、相手が誰か確認せずに開けましたね?不用心ですよ?チェーンもかけるように言ったじゃないですか」
京井は呆れたように言いながら、部屋に入ると中に居る山上に会釈をした。遅い昼食と言って、京井はダイニングテーブルに野菜スープとサンドイッチ、甘い物が欲しいと言うむつの為にと、バナナジュースを置いた。
「山上さんもまだでしたら、召し上がってください。私は、ちょっと仕事があってゆっくりしてられないので…むぅちゃんをお願いします」
忙しいのか、京井はそれだけ言うとすぐに部屋から出ていった。むつは少し寂しそうに、ドアの方を見ていたが入ってきた時に言われた通りに、チェーンをがちゃっとかけた。山上は苦笑いを浮かべながら、むつを促してダイニングテーブルについた。
「…早く熱下げないとな。仕事にも復帰して貰わないと、湯野ちゃんは良いとして、祐斗がてんてこ舞いになってる」
「そんなに忙しいの?」
「いやー?あいつはパソコン苦手だし、ほら経費の方ゆるゆるだからな。財布の紐をしっかり、握るむつが居ないと…俺も困る。それにまだ事務所も片付いてないからな」
「あ…はい。しろーちゃんから聞いたけど、そんなにヤバイんだ?」
「かなりな。おんぼろ事務所から廃墟になりそう」
呟くように山上は言うと、京井の持ってきたサンドイッチを頬張って、うまっと言って笑顔を見せていた。むつは何か考えるように、分厚い卵焼きの入ってるサンドイッチをもそもそと噛んでいる。
「…どうした?」
「ん、ううん?…カラシマヨ、カラシがきいてるなーと思って」
むつがサンドイッチを差し出すと、山上はばくっとかぶりついた。もごとごと咀嚼して、鼻の頭にシワを寄せると、そうだなと呟いてバナナジュースをちゅうちゅうと飲んだ。
「社長ってさ…ご飯食べながらコーヒー牛乳飲めるタイプでしょ?」
「あぁ、大丈夫だな。みやも西原も飯食いながら、イチゴオレ飲むだろ?」
「そーなのっ!?」
「え?そこ、そんなに驚くか?」
分厚い卵焼きのサンドイッチを一口かじり、もそもそと噛みながら、むつはそうなんだぁとか、へぇと呟いていた。




