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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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うんめいとは

翌朝、むつが起きたのは昼も近くなってからだった。当然のごとく、冬四郎の姿はどこにもない。むつは溜め息をつきつつ、テーブルに置いてある水で薬を飲み体温計を脇に挟んだ。ぴぴっと鳴った体温計に表示されている数字を見て、また溜め息だった。


寝て起きたばかりのせいか、布団に戻る気にもなれずカーディガンを着てストールを肩からかけ、とことことソファーに座った。テレビをつけて、一通りチャンネルを変えてみたが、特に観たいと思う物もなく、とりあえずつけといた情報番組を聞きながら、むつは膝を抱えるようにして座った。


きちんと約束通り、帰ってはきたが自宅は荒らされ、とてもゆっくり休めるような状況ではない。そこで、京井の言葉に甘えて、京井の経営しているホテルの部屋をしばらく借りる事にしてはいるが、落ち着けるとは言い難い。部屋は綺麗だし、簡易キッチンもある。風呂もベッドも大きいが、なんせ生活感はない。それに、まともに服もないとなれば外に出る事もままならない。そうでなくても、熱が下がるまでは外出禁止を言い渡されており、散々、心配と迷惑をかけたと思っているむつは、大人しくそれに従うしかなかった。


「…つまんない」


呟くように言ったむつは、膝の上に顎を乗せて溜め息をつくと、目を閉じた。眠くはないと思っていても、体調が悪いせいなのか、気付けばうたた寝をしていたようだった。


「むつ、むつ…」


低くかすれ気味の声に名前を呼ばれ、むつは顔を上げた。ぼんやりとした視界に、目付きのするどい無精髭の男が見える。


「社長?」


「おう、こんな所で寝てたのか?みやに頼まれて…部屋探ししたいんだろ?」


うん、とむつは頷いた。目を擦って、視界がはっきりしてきたむつの前には、ソファーの前で膝をついて顔を覗きこむ男、むつの勤め先の社長である山上聖が居る。


「ふぁ…ぁあ、顔洗ってくる…あと、お茶いれるね。待ってて」


うーんと伸びをしたむつは、ふらふらと洗面所の方に向かっていく。山上はそんなむつの後ろ姿を、心配そうに見ていた。

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