うんめいとは
どのくらい眠っただろうか、むつが目を開けると冬四郎も、椅子に座ったまま腕を組んで眠っていた。もぞっと布団から抜け出したむつは、近くに置いてあるカーディガンを手に取ると冬四郎にそっとかけて、布団に戻っていった。
次にむつが目を覚ました時には、薄暗い部屋の中で2人の男の話し声がしていた。がばっと起き上がったむつは、枕の下に手を突っ込んだ。
「…っ‼」
ぱちっと電気がつき、眩しさに目をぎゅっと閉じたむつは、枕の下から取り出した物を落とした。
「むぅちゃん、よく眠れましたか?」
「何だ…遥和さんとしろーちゃんか」
はぁと肩から力を抜くと、むつはぼすっとベッドに横になった。がたいの良いスーツ姿の男は、目尻に笑いシワを寄せながら、むつに布団をかけてやった。
「えぇ、お夕飯のご相談に来てたんです。起こしてしまって、すみません」
ベッドに腰かけた、がたいの良い男、京井遥和はむつの額に手を当てた。少し困ったような顔をし、冬四郎の方を向いた。
「まだまだ熱が高いですね。むぅちゃん…何なら食べられそうですか?」
「温かい物が良いなぁ。お汁粉とか」
「…ご飯じゃありませんね。宮前さんは何が良いですか?」
「お蕎麦ーっ。煮込んだやつがいい。ネギ多めで。しろーちゃんお蕎麦派だし」
「分かりました。むぅちゃんはどっち派なんですか?」
「麺は何でも好き」
「メンクイか…のわりに趣味悪いよな」
むつが掴んだ枕を冬四郎に向けて投げたが、冬四郎は易々とキャッチしてむつの頭の下に枕を置いた。京井はくすくすと笑いながら、支度してきますと部屋から出ていった。




