なつやすみ
何かに気付いたようなむつは、言うか悩む素振りを見せた。だが、タバコに火をつけて、煙を吐き出すと苦笑いを浮かべた。
「肝試しってさ、うちの長男が言い出した事よね。原因作ったのって兄だから…そりゃあ海やら花火やらってしてくれるわなぁと思ってさ」
「あ…もしかして、お兄さんも怒られたのかしら?」
「かもしれないね」
むつは煙を吐き出しながら、笑みを浮かべた。今になって思えば、あの時の晃と冬四郎がまめにむつと菜々の様子を見ては、何処かに連れ出してくれたり、アイスやらを買ってくれたのは、彼らなりの罪滅ぼしだったようにも思えた。
「何か悪い事しちゃったわよね」
「かな?でも、あれがあったからなーちゃんとは今でも一緒に居れるのかもって、あたしは思うけどなーっ」
「また懐かしい呼び方して…でも、そうね。あの時からだよね?むつが菜々って呼ぶようになったのも」
「そう言えば、そうかも。いやーあん時は必死だったからね。むしろ、あの時ほど必死になった時ってないかもね」
むつと菜々は、顔を見合わせるとくすくすと笑った。そして、残り少ないワインの入ったグラスを軽くぶつけ合った。




