なつやすみ
強い風の中、菜々とむつは抱き合うようにして、座り込んだままじっと耐えていた。あとからやってきた男たちは、風に苦戦しつつも、あっという間に2人の男を動けないほどに痛め付けた。
「むつ、菜々ちゃん。大丈夫か?」
強風に負けじと、やってきた男がむつと菜々を抱きすくめた。それと同時に、びたっと風が止んだ。2人から離れた男は、ふうっと息をついた。
「風が味方してくれたみたいだな…もぅ大丈夫だよ。菜々ちゃんのお母さんもじきに来るからね。遅くなって悪かった、怖かったろ?もう大丈夫だから」
頭を優しく撫でられたむつと菜々は男の顔を見るや、顔をくしゃくしゃっと歪めて、ぼろぼろと涙を溢し始めた。あとからやってきた男、冬四郎は優しげな笑みを浮かべて2人を見ていた。
「あ、ほら…菜々ちゃんのお母さん来たよ。むつも母さん来てくれたぞ」
冬四郎が指差す先には、ぱたぱたと駆け寄ってくる女の姿が見てた。むつも菜々も立ち上がり、それぞれの母親の元に駆け出した。そして抱き付き、ぎゅうっとしがみつくと、わんわんと泣いた。
むつと菜々は口々にごめんなさいと言いながら、いつまでも泣きじゃくっていた。母親たちは、ようやく安心出来たのか叱る事はせずに、娘を抱き寄せてぽろぽろと涙を流していた。




