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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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なつやすみ

がちゃんっと窓が割れると、菜々が先に窓に手をかけた。むつも駆け寄ると菜々の尻を押し出して、続けて窓から外に出た。べちゃっと地面に顔から落ちた菜々は、それでもすぐに顔を上げた。着地出来たむつは、ちらっと教室を見た。男たちが机や椅子を蹴散らして近付いて来ていた。


「菜々っ‼」


むつは、菜々の手を掴んで引きずるように立たせようとしたが、焦っているのか菜々は立ち上がれない。


「む、むつっ‼」


菜々が泣きそうな顔をして、むつにしがみついた。むつの視界には、すでに窓枠に足をかけている男の姿が見えていた。むつも泣きそうになりながら、菜々をぎゅっと抱き締めた。


目の前にやってきた男が、むつに狙いを定めると足を振り上げた。むつは咄嗟に身体を丸めて腕を出した。男の足は腕に当たったが、よほどの勢いがあったのか、むつはボールのように飛ばされて転がった。ごろごろと転がり、止まったがむつは声をあげるどころか、ぴくりとも動かなくなってしまった。


「むつーっ‼…っきゃぁっ‼」


駆け寄ろうと菜々の柔らかい髪の毛を男が、掴んで引き寄せた。引っ張られた髪の毛がぶちぶちと抜ける痛みに、顔を歪めながらも菜々は、むつの元に行こうとじたばたともがいた。だが、子供の力でどうにかなるものではない。

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