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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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なつやすみ

菜々の小さな背中が、余計に小さくなると、むつは無性に不安になり落ち着かなくなった。追い掛けるべきか、それともこのまま1人で行かせて、自分は帰るか。悩んでいるうちに、菜々の背中は完全に見えなくなった。むつは、薄暗い道端で、1人おろおろと考えていた。だが、きゅっと唇を噛むと菜々を追い掛けて走り出した。大事な大事な、たった1人の親友を置いて帰る事はやはり出来なかった。追い付いたら、ちゃんと謝ろうとむつは思った。


はぁはぁと息を弾ませて走っていくと、目の前に開けた場所が見えてきた。きっとあそこだと、思うと今まで以上に早く走れた。


回りを山に囲まれているせいか、歩いてきた道よりも暗い。それに、街灯もない。むつは、目を細めて菜々が居ないか探した。


「なぁーちゃーんーっ‼」


むつは両手を口の端にあてて、大きな声で菜々を呼んだ。だが、返事はない。あるのは、反響して返ってくる自身の声だけだった。


「なぁーちゃーんっ‼どこーっ‼なぁーちゃんってばーっ‼」


むつは大きく息を吸い込むと、腹から声を出した。これだけ、大声で呼べば校舎の中に居ても聞こえそうなのに、菜々からの返事はない。


もしかして、菜々は途中でどこか違う道にでもそれてしまったのではないかと、むつが引き返そうとすると、むつを呼ぶ声が聞こえてきた。


「なーちゃんだ‼」


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