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なつやすみ
「あ、ねぇ、むつ。ここじゃない?」
菜々が指差す写真を見たむつは、そうかもと頷いた。木造2階建ての古びた建物とグラウンドらしき物が写っている。
「ここの住所は…」
むつは菜々から写真が乗っている本を受け取り、周りに何があるのか、住所はどこなのかと調べていく。その辺の手際の良さは、小学生とは思えない程しっかりとしているものだった。恐らくは、歳の離れた兄たちの影響なのかもしれない。
そんなむつを菜々は、頼もしそうに見ていた。
菜々に見られている事に気付かないのか、むつは相変わらずぶつぶつ呟きながら、地図の上で小さな指を滑らせて着々と目的地をしぼりこんでいく。
「あ、ここら辺だ…」
ようやく分かったのか、むつは顔を上げてぱっと笑みを見せた。きらきらとした笑顔を見せられた菜々は、何となく恥ずかしくなり顔を背けた。だが、むつはそんな事には構わずに、ノートを広げると地図を書き込んでいった。




