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あこがれとそうぐう
むつは食事を終えると顔を洗って、着替えた。今日は私服ではなく、出社する時のようにパンツスーツにシャツを着ている。きっちり髪の毛を上げ、メークをしている。
「どうしたんだ?」
「お仕事だからね」
きりっとしたむつの様子を見て、冬四郎も少し表情を引き締めた。
「しろーちゃん、こさめを抱っこして、玄関の所に居て。良いって言うまでそこで待機」
こさめを押し付け、むつに背中をぐいぐいと押されて冬四郎は玄関の前まで行くと、つまらなさそうに壁に寄りかかった。
「追い出されたな」
冬四郎はこさめの額を撫でながら話し掛けたが、当然のようにこさめは返事などしてくれなかった。
冬四郎がこさめを相手に文句を言ってるのを聞きながら、むつは部屋の真ん中に立った。そして、目を閉じた。




