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なつやすみ
「おかーさぁーんっ‼なーちゃんとプール行ってくる」
むつがばたばたと支度をしながら、大きな声で言うと、2階からのっそりと冬四郎が下りてきた。
「元気だな…」
「しろ兄、おはようございます」
タオルを畳んで、ぎゅうぎゅうとバッグにつめていたむつだったが、手を止めると冬四郎に向かって挨拶をした。冬四郎は眠そうに、適当な挨拶を返してよこした。
「あ、朝御飯ね、むつが卵焼きしたの‼お父さんは美味しいって言ってくれたけど、いち兄には甘いって言われたぁ」
「むぅーつぅー?まぁーだぁー?」
「あ、はーい‼待ってぇーっ‼すぐ行く‼」
「菜々ちゃん玄関で待ってるのか?早く行ってやれ…あ、ほらジュース代な」
冬四郎は小銭入れに幾らか小銭を入れてやり、むつに投げて渡した。むつはそれを受け取ると、ばたばたと廊下を走って行った。冬四郎は、玄関の見える所から元気に2人が出ていくのを見送っていた。




