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あこがれとそうぐう
篠田が出ていくと、むつは起き出した。眠たそうな顔をしつつも、腕にはこさめをしっかり抱いている。
「おはよう。昨日かなり遅くまで何してたんだ?」
「おはよ。んー?まぁ、ね」
冬四郎のいれたコーヒーを飲みながら、むつは欠伸をしている。
「何かさ…篠田さんとしろーちゃんが絡む仕事って、寝不足と怪我、体調崩すがつきもので、嫌んなる時あるよ」
「随分な言いぐさだな」
こさめを抱いたまま、むつは椅子に座った。トーストにたっぷりと、苺ジャムを塗り出してくれたのをむつは半分に千切った。
「こさめさんも食べる?」
「猫にはダメだろ」
「ダメかな?けど、こさめさんならねぇ」
むつは指についたジャムを舐めながら、しきりにこさめに話し掛けている。冬四郎はそんなむつは不思議そうな顔で、眺めていた。
「今日もコレクション引っ掻き回すのか?」
「んんぅ」
口にトーストをつめたまま、むつは首を振った。ゆっくり噛み飲み込むと、唇のジャムを舌先で舐めている。
「今日は家中引っ掻き回す」
「は?」
「探さなきゃいけないものがあるの。しろーちゃん予定なんてないでしょ?手伝ってね」




