なやめるおとめ
「あれ…?」
「よお、おはよーさん」
「おはようございます…早いね」
むつが着くとすでに鍵は開いていて、眠そうな顔した山上が、掃除をしていた。意外な物を見て、むつは少し驚いたが、山上はもっと驚いたような顔をしていた。
「どうした…その格好は?」
「変?この前、買ったんだけど」
デニムスカートは膝上で、かがんだら下着が見えそうなくらい短い。しかもボタンの隙間からは、タイツをはいた足がちらちらと見えている。
「いや…今日も予定あんのか?」
「ううん、今日は辞めようかと…その分どっかに出掛けて来ようと思ってるけどね」
機嫌良さそうに、倉庫の中に入るとむつは、上着と鞄を置いて、その代わり厚手のストールをかけて出てきた。
「………」
「なーにーよー?似合わない?」
「たまには…良いんじゃないか?うん」
ぶつぶつと呟きながら、山上は机の上を拭いて使った雑巾を洗いにキッチンに入っていった。
「おはよう」
「あ、颯介さん。おはよ、ねぇねぇ変?」
出社してきた颯介の所に駆け寄ると、むつはストールを置いて、くるっと回って見せた。
「いや、今日は女の子っぽくて良いね」
颯介にそう言われると、むつはほっとしたような表情を浮かべて、それから照れたように、へへっと笑った。




