なやめるおとめ
翌日、すこぶる機嫌の悪いむつと二日酔いか顔色悪く妙によそよそしい山上。その様子を颯介と大学生アルバイトの谷代 祐斗は遠巻きに見ていた。
「何があったんすか?」
「むっちゃんは不機嫌、社長は二日酔いって事しか分からないかな」
「そうっすよね…むつさーん。コーヒー入りましたよ。ミルクとか入れちゃいます?」
むつが普段からブラックでしか飲まないのを知っているが、祐斗はこの妙な雰囲気を何とかしようと、にこにこしながらむつの机にコーヒーをおいた。
「んー?そうね…カフェオレにしようかな…ブラックはよくないよね」
「え?…あ、はい。俺と一緒くらい入れちゃって良いっすか?」
「手間だけど…お願い」
祐斗は驚いたような顔をキッチンに居る颯介に向けた。颯介も驚いているし、山上にいたっては、ショックを受けたような顔をしている。
「どーなってんすか‼むつさんっすか?本当に?あれ、人形でもしかして、実は源太なんじゃないっすか?」
ひそひそ声で祐斗が捲し立てると、流石の颯介も眉間にシワを寄せて、こっそりとむつを見ている。どう見ても、いつものむつにしか見えなかった。
「いや、むっちゃんでしょ」
むつはキッチンに入ってくると、颯介と祐斗を奥に押し込むように、押してきた。そして、タバコをくわえると溜め息と一緒に煙を吐き出した。
「確かに。煙が漏れてくる事ないですもんね」
祐斗がそう言うと、むつは不思議そうな顔をして何の話かと聞いてきたが、2人は何でもないと言った。




