なやめるおとめ
篠田は言われた通りに、スピーカーにしていたらしく、こさめの声が聞こえてきた。
「あ、こさめちゃん。こんばんわ、山上です…聞きたい事があるんだけどね、最近、むつから何か聞いてないかな?」
『むつから?どんな事?』
「彼氏が出来たとか…悩みがあるとか」
冬四郎と西原も電話口から、うーんと唸るこさめの声にじっと耳を済ませていた。
『ないよ。むつがどうかしたの?』
「いやー最近、むつの様子がおかしくてね。こさめちゃんなら何か聞いてるかと思ったんだけど」
『様子がおかしい?何か仕事でトラブルとかですか?』
不審に思ったのか、慎重そうな篠田の声が聞こえてきた。
「いや、そんなんじゃない…そう言えばお前、最近むつと会ったよな?何か変わった様子じゃなかったか?体調悪そうだったとか…何かないか?」
『そう、ですねぇ…あ、食が細くなったのかなって思いましたよ。食事残したりしてましたし、こさめが泊まりに行った時もあまり食べなかったみたいですね。やっぱり、体調崩してたんでしょうか』
篠田の話を聞き、冬四郎もそう言えばと思い出した。遊園地に行った時に、アイスクリームのコーンを寄越したり、昼食も半分近く残していた。
「ただの体調不良っぽいですね」
『あ、宮前君も一緒?この間は、本当にありがとう。またむつさんにも宜しく伝えといてくれるかな?』
「あ、はい。分かりました…伝えときます」




