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なやめるおとめ
颯介と山上に見送られている事など気付いてもいないむつは、イヤホンをして音楽を聞きながら歩いていく。今日は、とりあえず2駅分は歩こうと決めていた。
肌寒い季節だが、歩いているうちにじんわりと汗をかいてきた。むつは、ゆるやかな坂道をふうふうと息をつきながら、上っていく。そして、運動出来るスニーカーで通勤しようかなと思ったりもしていた。
坂を上りきると、目的とする駅はすぐそこだった。むつは、携帯を取り出して時間を確認した。よろず屋から歩いて約30分だ。この距離なら、毎日とは言えずとも週に何回かは歩いて帰れそうだと思った。
駅について、改札をくぐり電車をまっていると、どっと汗が出てきた。むつは服の裾を軽く引っ張ると、パタパタと風を送り込んだ。肌寒く早い人はマフラーをしたり、ダウンを着ているというのに汗をかいて暑そうにしている自分は、何だか異常に見えるんじゃないかとむつは思った。
鞄からハンドタオルを取り出して、額の汗を押さえるようにして拭いて、目の下と鼻の下の汗も拭いた。そして、むつは次からは手前の駅で降りて歩いて帰ろうと思った。




