あこがれとそうぐう
ワインを呑み干した篠田は、ふぅっと息を漏らした。何か色気がある、と冬四郎の内心羨ましくも思っていた。
「宮前君は歳も近いし、僕の趣味を聞いても引かないから…そういう気の許せる人と過ごしたかったんだよ。今は特に」
むつはワイングラスを置いて、つまみとして出したカシューナッツを食べながら首を傾げた。
「やっぱり、怪異とは触れたくありませんでしたか?」
「いや…そう、そうですね。人が体験したり見る分には良かったけど。実際、体験してみると怖いっていうのが本音だね。むつさんは、いつもこんな恐怖とも戦ってたんですね」
「わたしは怪異が怖いというより…それが起きた時に一緒に行動する人に何かあったらって思う事の方が怖いですね」
「むつさんは責任感が強いのかな?けど、もっと人に頼る事も覚えないといけないね。頼るって行為は信用の証のような物ですよ。一緒に働く上ではね」
アルコールの力か、一緒に過ごす時間の力か篠田のいくらか砕けた口調はより優しく、浸透するような言葉だった。
「そう…ですね。では、信用して今夜は篠田さんこさめちゃん連れて最初から一人で寝てください。わたしは、あの本物達と夜を過ごします」
「えっ‼それとこれとは…何か違うんじゃ?宮前君、何かフォローを」
「仕事の事は専門家の意見に従うべきなんじゃないですか?」




