あこがれとそうぐう
食事と風呂を済ませ、三人はリビングでのんびりと酒を呑んでいた。今夜は篠田の気に入っているワインだった。
夜、寝るわけにはいかないむつは、美味しいとは思いつつも、ちびちびと舐めるように呑んでいた。
「むつさんはワインはお嫌いでしたか?」
「何でですか?」
「あまり呑んでないようですし」
「そんな事ないですよ。美味しいと思いますが、遊びに来てるわけではありませんし…夜何かあった時に篠田さんを守れなかったら意味がありませんから」
篠田は嬉しそうに笑顔を見せた。
「こんな可愛い子に守るなんて言われるとは思いませんでした…もしかして昨夜は寝ずに居てくれたんですか?」
篠田が自分の目の下を指でなぞった。むつの目の下に隈が、出来てると言ってるのだ。
「仮眠は取ってますから、大丈夫です。期限切られちゃってますからね、今日明日で何とかしないと」
「そうなんですよね。山上さんも意地が悪い。折角、宮前君ともゆっくり呑めると思って誘ったのに」
そう言われ、冬四郎は少しだけ驚いていた。昨日の夜、むつが言っていたのは本当だったのかもしれない。
「篠田さん、ちょっと楽しんでます?」
「宮前君は疑り深いな、職業病か?むつさんが来てくれるまでは、本当にどうしようもないと思ってたけど…今は少し楽しいな」




