うたげ
部屋を移り、囲炉裏の前で手当てをして貰ったむつとこさめは、行儀悪くもごろんと横になっている。
小太りの男、化け狸の勲衛門は手当てをして貰うと恐縮して京井が酒や肴を用意するのを手伝っていた。
「えーっとつまり何なの?」
「簡単に言えば、遥和さんに嫉妬してた夕雨さんが勲衛門さんと組んで幻覚を見せて嫌がらせしてたのよ。ってか、こさめ、ちょーお手柄‼狸をやっつけた‼」
むつがきゃーと言いながら、こさめをぎゅうぎゅうと抱き締めると、こさめもむつにじゃれついた。顔中に引っ掻き傷のある勲衛門は、苦笑いを浮かべていた。
「むぅちゃん浴衣はだけてますよ、こさめさんも。女の子なんですから、少しは気にしてください」
すっかり元の様子に戻った京井は、はだけて太ももが丸見えになっているむつとこさめの浴衣を戻した。
「うむ…何から何までそっくりだな」
山上と酒を酌み交わしていた夕雨は、むつを見て懐かしむような顔をしていた。京井も夕雨の言葉に頷いている。
「えぇ、そっくりですよ。きっと足の怪我がなければ、夕雨さんも負けてたかもしれませんよ」
「かもしれないな…にしても、札や炎を操るとはな…父親はいったい?」
京井は首を横に振るだけだった。それを見て、夕雨は目を細めたが、それ以上は何も聞かなかった。そして、こさめと一緒に勲衛門の幻術を見せて貰って笑うむつを見ていた。




