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あこがれとそうぐう
「んーっ美味しい」
「うん、美味しい。宮前君は普段から料理してるの?」
空腹だったむつは、冬四郎の作ったオムライスを口に次々に運んでいく。
「休みの時だけですよ、普段は全くです。篠田さんは?さっきキッチンに立って分かったんですが、結構色々揃ってますね。ホームベーカリーもありましたし」
「形から入るタイプだからだよ。僕も休みの時に余裕があれば作るくらいで…普段は外食か呑む肴くらいで」
二人の会話に参加せず、むつは嬉しそうに半熟の卵を頬張っている。だが、それでも冬四郎と篠田の皿の方が綺麗になるのが早かった。
「と、むつさん口にケチャップが」
篠田がむつの口元のケチャップを指で拭うと、それを舐めた。むつは、スプーンを動かすのを止め、顔を赤くしてそれを見ていた。冬四郎も同じように、篠田の当たり前のようにした動作を見ていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…何でもないです」
むつは照れ隠しか、ふたたびスプーンを動かし始めたが、その顔は真っ赤だった。




