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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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うたげ

「…どうした?」


「え、っと…落ちて足をくじいたみたいで」


むつは、姿を見せた男を前に呆然としていた。颯介や京井よりよ背が高く、身体も大きいようだ。それに、山伏のような格好をしている。


「見せてみなさい」


男はむつの足を取ると、足首を触ったりしている。痛さに足を引っ込めようとしたが、強い力で掴まれてるわけでもないのに、足は動かさなかった。


「あの…修行僧の方、ですか?」


「まぁ、そんな所だ。君は、どこから来たんだ?こんな山の中で1人か?」


「いえ、友達と旅行で…この近くの旅館に」


「…そうか。なら、近くまで送ってあげよう」


男はそう言うと、軽々とむつを抱き上げた。ふいな事に、むつの被っていたニット帽が落ちて、長い髪の毛が溢れた。


「……みずき、さん?」


男にじっと見つめられたむつは、居心地悪そうに身動ぎをした。それと同時に、どさっと落ちた。


「す、すまん。大丈夫か?」


「はい。あの…みずきさんとは?」


「む、知り合いだ。昔のな。それにしても…よく似ている。瓜二つのようだ」


男はふっと笑うと、むつに背中を向けて乗るように言った。むつはおずおずと乗り、おんぶして貰った。


むつは男の広い背中に乗せて貰いながら、気まずそうにきょろきょろしていた。


「わ、狸だ」


「山の中だからな。狸くらい出る」


「そうですよね…初めて見たもので。落ちたのも、あけびを見付けて近寄ったからで」


「なかなか、やんちゃな子だな。顔が似てると、やる事まで似てくる物なんだな」


男が楽しそうに笑うと、むつは恥ずかしさに何も言えなかった。かさっかさっと枯れ葉を踏みしめて、むつをおぶりながら山道を歩く男をむつは不思議な物を見るように見ていた。

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