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あこがれとそうぐう
むつと篠田が、箱の中身の事で話を始めたので、冬四郎はしぶしぶ夕飯の支度を始める事にした。
何種類も作れるわけでもない冬四郎は、とりあえず腹も減ってる事だしと米を炊こうと米を洗い出したが、何となくその手付きは雑だった。
「開けてみると…本物でも、意外とそんなにって物もやっぱり多いですね。特に女性に関する物に絞ると」
「そうなんですか?」
今、箱から出されているのは絵画であったり置物、人形であったりするが、どれも何だか違うような気がした。
「他にはありますか?」
「クローゼットの中は見ましたか?」
むつが首を振ると、篠田がクローゼットを開けた。その中には隙間なく箱が詰め込まれていて、むつは軽く目眩を感じた。
「けど、そう…女性に関する物なんかあったかな?」
「中身確認しなくても分かるんですか?」
「え?えぇ、箱の大きさと場所で」
目を見開いたむつは、感心したようにはぁーと溜め息混じりの返事をした。
「篠田さん、むつ、飯にしましょうよ」
「今夜は宮前君か。本当、二人に来て貰って良かったよ。楽しいし嬉しいな」




