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うたげ
「害虫じゃないとしたら?」
「妖怪でもからんでくるって言うのか?」
「可能性はある…遥和さんは、微かにだけど妖の気配を感じたって、相談に来た時に言ってた」
むつは障子を開けて、縁側に出た。冬四郎と一緒に呑んでいた徳利と膳はそのまま残っている。
「むっちゃんは昨日どうだったの?」
「あたしは何も…ってか、申し訳ないけど、そんな余裕なかったからね」
苦笑いをして肩をすくめたむつは、庭に降りた。そして、埋めておいた札を回収して、燃やしてしまった。
「収穫はなしね」
「そうでもないだろ。跡形もないって言うのは分かったんだからな」
山上はそう言うと、慰めるようにむつの肩をぽんぽんと叩いた。
「それにしてもお前…虫がダメか?」
「ゴキブリと鼠が無理なの。ムカデとかげじげじとか蜘蛛は大丈夫なんだけど。だから、ハムスターも無理」
「…歯が伸びる系がダメなんですか?」
「そーゆー事よ。遥和さんと話してくる…他に出来そうな事はないし。後は適当に」
むつはそう言うと、手袋とマスクを外して、京井が居る本館の方に向かっていった。




