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うたげ
京井と別れたむつは、バスタオルを持って露天風呂に向かった。湯気がもうもうと立っている。脱衣場の籠に服を入れて、そうっと足を入れた。身体が冷えたせいか、湯が熱く感じる。しばらくは、足だけを入れていたが慣れてくるとじゃぶっと肩まで浸かった。
全員で入っても余裕そうな位に広いし、オブジェの岩や竹垣が何とも風流な感じだった。
しばらくは、とろったした湯に身を任せていたが、暑くなってきた。上がって足だけを入れて、ちゃぷちゃぷさせながら京井の言っていた景色を見ていた。
「誰だ?」
ざばっと岩の方から湯から出て、近付いてくるのは冬四郎だった。
「しろーちゃん…」
「あ、むつ…」
2人は慌てて湯に身体を隠した。
「何してんのよ」
「お前こそ、早起きだな…」
むつは鼻の下まで湯に浸かりながら、頷いた。そして辺りを見回すと、そろそろと湯の中を歩いていき冬四郎の隣に座った。
「おはよ」
「おはよう…居るとは思わなかったよ。悪いな、先に出るよ」
冬四郎が出ようとすると、むつは手を掴んで引き止めた。冬四郎は困ったように、視線をさ迷わせたが諦めたかのように湯に戻った。




